
日本列島は、一年を通じて平均降水量が1700ミリなので、木々にとっては非常に恵まれた風土です。どうして日本は雨がよく降るかと云えば、それは日本が島国だからなのです。太平洋上で発生した熱帯低気圧などが生み出す水分と、日本海側で蒸発した水分が、両方とも日本にやって来て雨になります。

数万年前までの日本では、気候がまだまだ寒くて亜寒帯針葉樹の森が栄えていました。その頃に広がっていたある杉の種類が、今では八ヶ岳の斜面に数百本しか自生していない話を、森林科学館で聞いた覚えがあります。そして1万3千年前の縄文時代が始まる前から、気候が急速に温暖化し日本列島は温帯に入り、そして広葉樹林帯が広がっていきます。ブナの木は日本海側に、東日本にはナラや栗の木が、西日本にはカシやシイの木々に覆われていきました。

そして3000年前にまた大きな気候変化が起こり、日本列島は寒冷化します。その時代に中国大陸では動乱の時代となり、気候悪化で移動する民族に押し出された人々が日本に流入して来ます。家畜を連れた稲作を行う人々でした。こうして日本では、1万年ほども続いた縄文文化が危機を迎え、弥生時代へと向かっていく中で、森林破壊の歴史が始まっていきます。

しかしそれでもなお日本では木々を大切にする文化があり、森林破壊の程度は世界の他の地域に比べて、格段に少ないのです。おそらくは3000年前の時点から40%ほどに減っただけで現在の文明社会に至っているそうなので、ほとんど森だったヨーロッパの森林減少率とは比べものにならないほど、森林面積率を保っています。

おそらくその理由は、日本には森と暮らす生活、木々を活かした文化、森の文化の伝統があったからではないのかと思います。ここでは、そうした視点からも花鳥風月の木々を語っていきたいと思います。 |